5)有名人だったら写真を撮って公開しても良いか?

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プライバシー権、肖像権

プライバシー権とは、私生活や私的な事柄をみだりに
他人に知られたくないと求める権利です。

近年では、情報化社会が進展するに伴い
自己に関する情報をコントロールする権利
情報プライバシー権)という積極的な権利をも
意味すると考えられるようになってきました。

プライバシー権侵害になる可能性があるのは、
例えば、
私生活の場所、
内容の覗き見、
私語の盗聴及び録音公開、
手紙などの個人的文章の公開、
映像による公開等です。

SNS上で例えば
今、知人のAさんを新宿の喫茶店で見かけた、
そのあと女性と一緒に映画館に入っていった
という程度の書き込みでも、
運が悪ければ訴えられる可能性があります。

また、写真を公開したら、
その中に写っていた人がそこにいる事実を
知られたくなかった場合も同様。

だから、基本的に写真を投稿するとき、
自分以外の人の顔は、
本人の同意を得ない限り見えないように
加工する必要があります。

プライバシー権が侵害された場合、
民法上の不法行為として、
損害賠償請求が認められます

肖像権とは、プライバシー権の一部であり、
容姿を無断で写真に撮られたり、
撮られた写真を無断で公表されたり
しないように主張する権利です。

肖像権は大きく分けると人格権の一部としての
権利の側面と肖像を提供することで
対価を得る財産権の2つに分けられます。

プライバシー権、肖像権ともに、
明文化された法律ではありません。

①プライバシーの権利に関連する判例

<「石に泳ぐ魚」事件判決>
プライバシーの権利と表現の自由の
調整が問題になった判決として、
「石に泳ぐ魚」事件判決がある。

『石に泳ぐ魚』(いしにおよぐさかな)は、
柳美里の小説。1994年、柳はこの作品のモデルとなった
韓国人女性により、出版差止めを求める裁判を起こされた。

モデルとなった当時大学院生の女性は作品を読み、
自分の国籍、出身大学、専攻、
家族の経歴や職業などがそのまま描写され、
自身の顔の腫瘍を陰惨な表現で描写されたことを知り、
著者の柳美里に出版を止めるよう懇願した。

柳は女性に対し単行本化の取りやめを約束したにもかかわらず、
それを破り出版に踏み切ったことから、
女性は出版差止めの仮処分を申請した。

その後、東京地方裁判所に出版社(新潮社)と
柳に対する訴訟を提起して、
出版差し止めと慰謝料を請求した。

訴訟は最高裁判所で柳側敗訴の判決が言い渡され確定した。

柳美里によるプライバシー及び名誉侵害行為によって、
被害者が重大な損害を受けるおそれがあり、
かつその回復を事後に図ることが困難になる。

被害者は大学院生にすぎず公共的立場にあるものではなく、
雑誌掲載小説が単行本として出版されれば
被害者の精神的苦痛が倍増され、
平穏な日常生活を送ることが困難になる。

文学的表現においても他者に害悪をもたらすような表現は
慎むべきである旨を、最高裁は判決理由で指摘した。

<大阪住基ネット訴訟判決>
また、行政による個人情報の管理・利用が
プライバシー侵害の権利を侵害するかが
問題となった判例として大阪住基ネット訴訟判決がある。

2006年11月、「住基ネットは個人情報保護対策に欠陥があり、
拒否する人への運用はプライバシー権を
著しく侵害し憲法13条に違反する」
として箕面市、守口市、吹田市に原告の
住民票コードの削除を命じる原告勝訴判決を言い渡した。

②危険!スマホ写真で
あなたの住居や居場所が突きとめられる!
スマートフォンには
GPS(全地球測位システム)や
電波を使って、
自分がいる場所を判断する機能があります。
それによって、スマートフォンの位置を探したり、
移動用ナビゲーションアプリを作動させたりすることができます。

この「位置情報」は、スマートフォンで撮影すると、
写真データの中に書き込まれます

これは後になってからどこで撮った写真か
わかる便利なものなのですが、
インターネットで公開すると、
撮影場所を調べることができる場合があります。

自宅で撮った写真をアップロードすると
自宅住所を公開することなります。

ばれないだろうと、
違う場所で撮ったかのように事実と違う説明をすると、
すぐに信用をなくすばかりか、
トラブルになりかねません。

家族全員が旅行中なのが分かって、
留守宅に泥棒が入ったという例もあります。

仮に通常時であれば問題なくても、
今後運悪く炎上したり、ストーカーなど
危険人物に狙われたりした場合に、
「命取り」になる可能性があるので、
そこまで考えて写真投稿を行いましょう。

解決策としては、スマートフォンの
「写真への位置情報の記録」
の設定をオフにすれば大丈夫です。

方法は販売店に直接聞くか、
電話サポートで教えてもらいましょう。

③有名人を撮った写真の公開は特に危険!
一般の人の顔が写った写真を
無断で公開してはいけないのは既に説明した通りです。

相手が有名人の場合はどうだと思いますか?
「相手が有名なら公開しても良いのでは」
と思っていませんか?
実はその逆で有名人の場合は
余計気をつけなくてはなりません

この場合、2つの問題を考えなくてはなりません。
1つは一般の人と同じプライバシー権。

そしてもう1つは、パブリシティー権

これは有名人が持っている
「お客を惹き付ける力」
のことです。
財産権ですので、他人が自由に使うことはできません。

有名人の写真を公開したい場合は、
一般の人と同じで本人に断らなくてはなりません。

この場合、勝手に撮った写真を後で
「公開して良いですか?」
と聞くのは得策ではありません。

相手は勝手に撮られたことがイヤかもしれませんし、
どんな写真が公開されるかもわからないわけですから。

むしろ、直接本人に頼んで一緒に撮ってもらってから、
承諾を得る方が良いでしょう。

一緒に撮るときに、
一定のコミュニケーションが生まれるし、
相手も公開を前提としたポーズを撮ることになりますので。

④肖像権は顔だけではない!?
一般に肖像権は、
顔さえ写っていなければ問題ない
と思われがちですが、そうではありません。

肖像権は写真を撮られる側の権利で、
それによって精神的な苦痛を
受けないようにするためのものです。

ですから例え後ろ姿であっても、
服装や髪型、持ち物、場所などによって
その人が特定できるのであれば、
肖像権の保護の範疇に入ります。

肖像権を侵害する写真かどうかの判断は、
相手の気持ちや侵害の程度などによって変わります。
重要なのは、相手に迷惑をかけないようにする配慮です。

同じ写真を公開するにしても、
写真のタイトルが悪意あるものであれば、
嫌がられる可能性が高いですし、
逆に好意的なものであれば、
むしろ喜んでもらえるかもしれません。

相手や周りへの配慮は撮影の時にも必要ですが、
公開の時にも忘れてはなりません。